
20万件のデータ分析から見えた、オフプランの価値上昇とデベロッパー選びの秘訣
ドバイの不動産市場において、特にオフプラン(未完成物件)投資に関する情報は多岐にわたりますが、中には誤解を招くものも少なくありません。多くの不動産エージェントは、建設期間中に物件価格が大幅に上昇すると謳いますが、実際のデータはどうでしょうか。
この記事では、2020年以降のドバイにおける20万件以上の不動産取引データを徹底分析し、建設期間中の物件の真の価値上昇率、そして成功に導くデベロッパー選びの重要性について、具体的なデータに基づき解説します。
本記事の要点
- アパートの平均価値上昇率:建設期間中のアパートの平均価値上昇率は、エージェントが語る45%ではなく、14.7% です。
- ヴィラ・タウンハウスの優位性:ヴィラ(一戸建て)やタウンハウスは、建設期間中に平均で約45% と大幅な価値上昇を見せています。
- デベロッパー選びの重要性:アパート投資においては、デベロッパーの選定が市場平均を上回るパフォーマンスを出すための最も重要な要素です。
- ユニット数の意外な関係:アパートもヴィラも、プロジェクトのユニット数が多いほど成長率が高いという、一見逆説的なデータが出ています。これは、資金力のある大手デベロッパーが大規模なプロジェクトを手掛ける傾向にあるためです。
建設期間中の物件価値上昇の真実
不動産エージェントから「建設期間中に物件価値が45%も上がる」と聞くことがあるかもしれません。しかし、私たちの分析結果は異なる現実を示しています。
アパートの平均価値上昇率:14.7%
2020年以降に販売されたすべてのオフプラン物件の価値成長を個別に追跡した結果、アパートの建設期間中の平均価値上昇率は**14.7%**でした。これは、多くの人が期待する数字とはかけ離れているかもしれません。
ヴィラとタウンハウスの例外:平均45%
しかし、この市場で驚異的な成長を遂げた物件タイプがあります。それは「ヴィラ(一戸建て)」と「タウンハウス」です。これらの物件は、建設期間中に平均で**約45%**もの価値上昇を記録しており、アパートとは一線を画するパフォーマンスを見せています。
成功を左右するデベロッパー選び
建設期間中の物件価値上昇において、デベロッパーの選択は極めて重要です。過去5年間で2つ以上のプロジェクトを完成させた主要なデベロッパーを対象に分析を行いました。その結果、デベロッパーは大きく3つのカテゴリに分けられます。
1. 市場平均を上回る成長を見せたデベロッパー
以下のデベロッパーは、市場平均よりも高い成長率を示しました。
| デベロッパー | 成長率 | プロジェクト数 |
|---|---|---|
| Meraas | 30.5% | 2 |
| Nshama | 26.4% | 6 |
| Imtiaz | 26.2% | 4 |
| Iman | 25.6% | 4 |
| Binghatti | 21.2% | 29 |
| Emaar | 21% | 11 |
| Select Group | 20.7% | 3 |
| Ellington | 20.2% | 7 |
| Meydan | 19% | 17 |
これらのデベロッパーは、それぞれ独自の強みを持ち、高いパフォーマンスを発揮しています。
2. 平均以下の成長率だったデベロッパー
以下のデベロッパーは、市場平均を下回る成長率でした。
| デベロッパー | 成長率 | プロジェクト数 |
|---|---|---|
| Reportage | 13.7% | 2 |
| TownX | 13.5% | 4 |
| Samana | 8% | 4 |
| Sobha | 7.8% | 7 |
| Tiger | 7.1% | 4 |
特にShoaについては、優れた建築品質と住みやすいコミュニティで高く評価されています。しかし、その物件価格が元々高めに設定されているため、短期的な価値上昇の余地が限られる傾向にあります。もし居住目的や高い賃貸利回りを目的とするなら良い選択肢ですが、短期的なキャピタルゲインを狙う投資家にとっては注意が必要です。
3. 価値が減少したデベロッパー
中には、建設期間中に物件価値が減少してしまったデベロッパーも存在します。特定のケースでは、ある大手デベロッパーのアパートが建設期間中に5%も価値を落としました。その原因としては、多くの類似したユニットを大量に建設し、かつ品質があまり良くない点が挙げられます。これにより、物件の供給過多と品質への懸念が価値成長の妨げとなったと考えられます。
結論として、アパート投資において市場平均を上回るパフォーマンスを目指すなら、デベロッパーの選択が最も重要な要素となります。
エリアのパフォーマンスとユニット数の意外な関係
次に、建設期間中の価値上昇におけるエリアのパフォーマンスについて見ていきましょう。
意外な事実:ユニット数が多いほど成長率が高い?
私たちが発見した、非常に興味深く、かつ直感に反するデータがあります。それは、プロジェクトのユニット数が多いほど、その物件の成長率が高くなる というものです。
通常、ユニット数が少ない方が希少性が高く、競争が少ないため、需要と供給のバランスが良くなり、より高い成長に繋がると思われがちです。しかし、実際は異なります。
その理由として、財政的に強力でブランド力のある大手デベロッパーは、通常、大規模なプロジェクトを手掛け、より多くのユニットを供給する 傾向があるからです。これらのデベロッパーが手掛ける物件は品質も優れているため、結果として価値上昇も早くなります。もちろん、強力なデベロッパーが小規模なブティックビルディングを手掛ける場合も、同様に高いパフォーマンスを示します。
ヴィラ・タウンハウス投資の魅力
冒頭で触れたように、ヴィラとタウンハウスは建設期間中に平均で約45%もの価値上昇を記録しました。このセグメントの強さをさらに深く掘り下げてみましょう。
中小デベロッパーでも高い成長率
驚くべきことに、過去5年間において、小規模で知名度の低いデベロッパーが手掛けたヴィラ・タウンハウスですら、建設期間中に平均で31%の成長を達成しています。これは、トップティアのデベロッパーが手掛けたアパートの平均成長率よりも高く、いかにヴィラ・タウンハウスというセグメントが強力であるかを物語っています。
失敗事例とその理由
しかし、ヴィラ・タウンハウス投資においても、価値がほとんど成長しなかったり、減少したりしたケースも存在します。これらのケースでは、実用性に欠ける間取り、狭い部屋、キッチンスペースの不足、疑問符がつく建築品質 など、物件自体の質がターゲットとする購入層に適していなかったことが主な原因でした。
ヴィラ・タウンハウスでも、アパートと同様に、強力なデベロッパーが手掛ける大規模なコミュニティの方が、最終的により良いパフォーマンスを発揮する傾向にあります。
まとめとデータ活用
ドバイのオフプラン物件投資において、建設期間中の価値上昇は、物件の種類とデベロッパーの選択によって大きく異なります。アパートの平均的な成長はエージェントの謳い文句ほどではないものの、ヴィラやタウンハウスは堅実な上昇を見せています。
成功への鍵は、市場のデータを正確に理解し、信頼できるデベロッパーを選定することにあります。また、エリアの評判だけでなく、個別のプロジェクトやデベロッパーの過去の実績を詳細に分析することが、賢明な投資判断へと繋がります。
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