
ドバイ不動産はバブルなのか?専門家が分析する市場のリスクと今後の展望
はじめに
近年、著しい価格上昇を見せているドバイの不動産市場。スイスの大手金融機関UBSが発表した「グローバル不動産バブル指数」では、ドバイ市場が「バブルのリスクが高い」と指摘され、投資家の間で懸念が広がっています。しかし、現地の専門家は記録的な人口増加と旺盛な需要を理由に、市場は安定しているとの見方を示しています。本記事では、ドバイ不動産市場が直面するバブルのリスクと、その一方で市場を支える強力な要因について、初心者にも分かりやすく解説します。
UBSグローバル不動産バブル指数が示す警告
UBSのレポートによると、ドバイの不動産市場は「リスク上昇」カテゴリーに分類されました。これは、ロサンゼルスやアムステルダムといった世界の主要都市と同等のリスクレベルです。レポートが指摘する主な懸念点は以下の通りです。
- 急激な価格上昇:2023年半ば以降、不動産価格は二桁成長を記録し、5年前と比較して約50%も高騰しています。
- 賃料を上回る価格上昇ペース:最近では、賃料の上昇ペースを物件価格の上昇が上回っており、これは市場過熱の典型的な兆候とされています。
- 悪化する住宅取得能力:不動産価格の高騰に賃金の上昇が追いついておらず、金利も高止まりしているため、一般市民の住宅取得が困難になっています。
- 将来の値上がり益への過度な期待:他の国際都市と比較して魅力的な賃貸利回りを維持しているものの、投資家が将来的な値上がり益(キャピタルゲイン)に依存する傾向が強まっています。
UBSは、これらの要因に加え、原油価格の変動や海外からの資金流入の不安定さ、そして供給過剰の可能性が市場を不安定にする可能性があると警告しています。
専門家が楽観的な見方を維持する理由
UBSの警告にもかかわらず、多くの現地専門家はドバイ市場の基盤(ファンダメンタルズ)は強固であると主張しています。その主な理由は以下の通りです。
記録的な人口増加
ドバイの人口は驚異的なペースで増加しており、2026年の目標とされていた400万人を2025年8月に前倒しで達成しました。この人口増加が住宅需要を強力に下支えしています。2025年には約5万件の新規事業許可が下りており、今後も力強い人口増加が続くと予想されています。専門家は、供給される物件数を需要が上回る状況が続くと見ています。
ドバイ市場の独自性と強み
ドバイの不動産市場には、他の都市にはない独自の強みがあります。
- 開かれた市場:海外からの購入者に対する税金や厳しい規制が少なく、市場が柔軟に供給を調整できる環境が整っています。
- 多様な不動産:高級ブランドレジデンスやウォーターフロント物件、トークン化された不動産など、多様な商品が幅広い投資家層を惹きつけています。
- 現金購入者の多さ:ローンに頼らない現金での購入者が多く、市場の安定に寄与しています。
- 安全な避難先としての役割:地政学的な安定性から、ロシア、インド、アフリカ、そしてヨーロッパの富裕層が資産の避難先としてドバイの不動産を求める動きが活発です。
考慮すべき潜在的リスク
市場の強固な基盤とは裏腹に、無視できないリスクも存在します。
- 所得と不動産価格の乖離:賃金の上昇が不動産価格の高騰に追いついていないため、長期的な居住者による実需が減少する可能性があります。
- 海外投資家への依存:世界経済の動向や投資家の心理的変化に市場が左右されやすい側面があります。
- 供給過剰のリスク:建設許可件数は、前回の市場後退期直前の2017年の水準に近づいており、供給過剰が再び市場の重荷となる懸念が指摘されています。
まとめ
UBSのレポートは、ドバイ不動産市場に潜むリスクを明確に示していますが、これは差し迫った暴落を予測するものではありません。記録的な人口増加と国際的な安全資産としての地位は、市場を支える強力な柱です。一方で、住宅取得能力の低下や供給過剰への懸念など、慎重に注視すべき課題も山積しています。
ドバイの不動産市場は、過去にも多くの専門家の予測を覆してきた歴史があります。今後、市場が安定を維持できるか、あるいは調整局面に入るのかは、これらのプラス要因とマイナス要因のバランスにかかっていると言えるでしょう。