
ドバイの家賃高騰が住民の意識を変える | 賃貸から持ち家へ、55%が物件購入を計画
序論:ドバイで加速する「賃貸から持ち家へ」の流れ
ドバイの不動産市場において、住民の意識に大きな変化が見られます。かつては賃貸が主流と考えられていたこの都市で、記録的な家賃高騰を背景に、多くの住民が自身の住まいを購入する方向へと舵を切り始めています。最新の調査によると、ドバイの賃貸居住者のうち55%が、今後1年から3年以内に不動産を購入する計画を持っていることが明らかになりました。これは前年の25%から大幅な増加であり、市場の構造的な変化を示唆しています。
本記事では、このトレンドの背景にある要因、市場の具体的な動向、そして今後の展望について、専門的な知見を交えながら分かりやすく解説します。
家賃高騰がもたらす意識の変化
この大きな変化の最も直接的な要因は、高騰し続ける賃貸料です。多くの住民にとって、家賃の支払いが大きな経済的負担となっています。
- 平均年間家賃:ドバイの賃貸居住者が支払う平均家賃は、年間約99,000ディルハムに達しています。
- 移転の検討:調査対象者の69%が、もし家賃が大幅に上昇した場合、移転を検討すると回答しています。
このような状況から、多くの人々が毎月の家賃を支払い続けるよりも、長期的な安定と資産形成を求めて不動産購入を現実的な選択肢として捉え始めています。不確実な毎年の賃貸契約更新を避け、自身の資産を築くことが、より賢明な判断だと考えられているのです。
ドバイへの長期的な定住意向
この意識変化は、ドバイに長期間住み続けたいと考える人々が増えていることにも支えられています。調査では、回答者の59%が少なくとも10年間はドバイに滞在する予定であると答えており、平均的な希望滞在年数は11.2年に及びます。さらに、36%の人々が不動産を将来的な投資、すなわち資産形成の手段として見ており、単なる住居以上の価値を見出しています。
住宅ローン利用の拡大と市場の活況
不動産購入への関心の高まりは、住宅ローン市場の活況にも表れています。かつては自己資金での購入が主流でしたが、現在では金融機関のサポートを活用する動きが広がっています。
- 住宅ローン利用意向:物件購入を計画している人のうち、61%が住宅ローンの利用を想定しています。
- 取引件数の増加:Cavendish Maxwellのデータによると、2025年第1四半期の住宅ローン取引件数は9,300件に達し、前年同期比で24%増加しました。取引額も204億ディルハムに達し、前年同期比で47%近く増加しています。
この傾向は、特に中間所得層の購入者によって牽引されています。2025年10月には、より手頃な価格帯の小規模住宅への関心が高まり、平均ローン額が417万ディルハムに減少したというデータもあります。
中古物件・オフプラン物件市場の動向
市場の活況は、新築物件だけに限りません。
- 中古物件市場:Engel & Völkersの報告によると、2025年の最初の8ヶ月間における中古物件の売上は、前年同期比で22%増加しました。これは、短期的な賃貸ではなく、長期的な居住を目的とするエンドユーザーが増加していることを示しています。
- オフプラン物件市場:完成前物件(オフプラン)も人気を集めています。2025年第2四半期のオフプランアパートメントの取引額は、前期比43%増の602億ディルハムに急増しました。魅力的な価格設定や柔軟な支払いプランが、購入者の信頼を得ています。
まとめ:ドバイ不動産市場の新たな局面
ドバイの不動産市場は、家賃高騰をきっかけとして、賃貸中心から持ち家中心の市場へと構造的な変化を遂げつつあります。これは一時的なトレンドではなく、住民の長期的な定住意向と資産形成への関心の高まりに裏打ちされた、より持続可能な動きと言えるでしょう。
この変化は、デベロッパーや金融機関、そして政策立案者にとっても新たな対応を求めるものです。今後、特に中間層やファミリー向けの住宅需要はさらに加速し、より柔軟な住宅ローン商品の提供が期待されます。ドバイの不動産市場は、住民が腰を据えて生活し、資産を築くための、より成熟した市場へと進化していくことでしょう。
参考記事: From renters to buyers: Dubai rent hike pushes tenants to buy homes - Khaleej Times