
UAE不動産市場の購買力ランキング:為替変動が投資家心理に与える影響を解説
はじめに
ドバイをはじめとするUAE(アラブ首長国連邦)の不動産市場は、世界中の投資家から注目を集めています。しかし、投資家の出身国によって、その「購買力」には大きな差があることが、2025年9月22日に発表された最新の調査で明らかになりました。本記事では、Stamn Real Estate Developmentが公表した「外国人バイヤーパワー指数」に基づき、どの国の投資家が最も強い購買力を持っているのか、そしてその背景にある要因を専門家の視点から分かりやすく解説します。
UAE不動産市場における外国人投資家の購買力ランキング
同指数によると、UAEの不動産を購入する上で最も強い購買力を持つのは、英国、米国、クウェートの投資家であることが判明しました。トップ10には、その他の中東諸国や欧米諸国の投資家が名を連ねています。
購買力トップ10の国々
- 英国
- 米国
- クウェート
- サウジアラビア
- カタール
- フランス
- ドイツ
- オランダ
- カナダ
- オーストラリア
このランキングは、為替レート、自国と比較した際の手頃さ、富、平均所得、資本の移動の自由度といった複数の要素を総合的に評価して算出されています。
為替レートが購買力に与える大きな影響
今回のランキングで特に注目すべき点は、為替レートの変動が投資家の購買力に直接的な影響を与えていることです。
英国・欧州投資家の優位性
英国の投資家がトップに立った主な要因は、英ポンドがUAEディルハムに対して大幅に上昇したことです。2025年1月には1ポンドあたり4.47ディルハムでしたが、同年9月には5ディルハムを超え、約14年ぶりの高値を記録しました。このポンド高により、英国の投資家は以前よりも有利な条件でUAEの不動産を購入できる状況にあります。
同様に、ユーロもUAEディルハムに対して価値が上昇しており(2025年1月の3.76から9月には4.35へ)、欧州の投資家にとっても追い風となっています。
インド・パキスタン投資家が直面する課題
一方で、これまでドバイ不動産市場の主要な買い手であったインドとパキスタンの投資家は、自国通貨安という課題に直面しています。
- インド:インドルピーは対UAEディルハムで史上最安値となる1ディルハムあたり24ルピーまで下落しました。この通貨安が購買力を大きく低下させ、ランキングでは18位にとどまりました。
- パキスタン:パキスタンルピーの為替レートは比較的安定しているものの、国内の高いインフレ率が実質的な購買力を弱め、ランキングは22位という結果になりました。
購買力低下でも続く投資意欲
興味深いことに、インドルピーの価値が低下しているにもかかわらず、インドの富裕層やUAE在住のインド人駐在員による不動産投資は依然として活発です。これは、成長を続けるUAE市場への期待感や、資産分散の観点から、為替の不利を乗り越えてでも投資する価値があると判断されているためと考えられます。
Stamn社のCEOであるZheng Jian氏は、「ドバイアイランズのような地域では、島の生活や『第二のパーム・ジュメイラ』としての投資ポテンシャルに惹かれるヨーロッパの投資家からの関心が高い一方、ジュメイラ・ガーデン・シティのような新興エリアでは、手頃な家族向け物件を求めるロシアやCIS諸国の賢明なバイヤーが見られる」と述べ、投資家の出身国によって需要の傾向が異なることを指摘しています。
まとめ
今回の調査結果は、UAEの不動産投資を検討する上で、為替レートの動向がいかに重要な要素であるかを明確に示しました。英国や欧州の投資家が通貨高を背景に購買力を強める一方で、インドやパキスタン、そして日本のような通貨安に直面している国の投資家は、相対的に購買力が低下する逆風に晒されています。
しかし、成長を続けるUAE市場の魅力や資産分散の観点から、為替の不利を乗り越えてでも投資する価値があると判断されるケースは少なくありません。
各国の経済状況や個人の資産背景によって投資動機は多様化しており、UAE不動産市場が引き続き世界中の投資家にとって魅力的な市場であり続けることに変わりはないでしょう。
参考記事
https://www.khaleejtimes.com/business/property/uae-property-weak-rupee-purchasing-power